序奏とアレグロ
Introduction and Allegro composede in 1986
for Brass Quintet

 この作品は、元のスコアに日付が一切書かれていないので、正確には作曲した年が分からないのですが、おそらく「たなばた」よりも少し前。香里丘高等学校在学時の作品だと思います。
 なんと、作曲から10年以上は経って、2000年8月27日、大阪音楽大学出身の若手奏者によって初演されることになりました!(この文章を書いているのは2000年7月末です)
 ここまで初演の機会に恵まれなかったのは、この作品が短いながらも超絶技巧がちりばめられており、学生時代たびたび友人に演奏を頼んだ物の、譜面を見た瞬間「パス、パス」と、逃げられ続けたからなのです。今回、果敢にもこの作品にチャレンジしてくれる若手奏者達には本当に感謝しています!
 さて、取り立てて、卓越した技術を持つ金管楽器奏者が周りにいることもなかった高校時代に、何故このような難曲を作ったのでしょうか?
 それは、FMで偶然、日本でも最高の技術を誇るプロの金管五重奏団「上野の森ブラス」の演奏を聴き、そのすばらしさに感銘を受けたからなのです。TrumpetやTromboneのHigh Toneはもちろんのこと、Hornに音程が存在する!そして何よりも驚いたのはTubaの機動性です。普段はマーチのベースを刻むくらい。たまにTromboneとユニゾンでのメロディー、そして「恋のカーニバル(岩井直溥編)」に至っては、あれがTubaの限界と認識していたのですが、この時に演奏されていた織田英子作曲「金管五重奏曲」を聴いて、そのTubaの圧倒的なパフォーマンスには度肝を抜かれてしまったのです。
 そんなわけで、「上野の森ブラス」を意識しながら、これまで自分が持っていた金管楽器の認識を振り払うように、あるいは何かに挑戦するように書いたのがこの作品です。当然、周りにこの作品を演奏できるプレーヤーなどいるはずもなく、若かった私はなんと「上野の森ブラス」の事務局の住所を調べ、楽譜を送ってしまったのです!その譜面が現在どうなっているかは知らないですが、専属アレンジャーで作曲家である織田英子さんから、とても丁寧なお返事を頂き、私にとっての大変大きな励みになったのを今でも良く覚えています。
 さて、数年後音楽大学に進学した私には、少なくとも高校時代に比べて、格段に優れた金管楽器の奏者達と友人になることが出来たのですが、この作品の譜面を見せると、先述の通り・・・。こんな事もあってかお蔵入りを覚悟した作品の一つだったのですが、2000年2月、とある宴席でTrumpet奏者の戸田君が、まだ音を出されていないこの作品に興味を示してくれ、今回の初演が決まったのです。
 和声的にやや無理があるところを一部手直しした物の、技術的には全く妥協せず、譜面を渡したところ、予想通り、数日後「非常に難しいです」と、まずTrombone奏者からメールが届きました。これは予想通りというか、ある意味私にとっては嬉しい反応でもありました。なぜなら、プロのオーケストラで首席奏者を勤めるほどのプレーヤーから確かに難しい曲だと認められたわけですから。(笑)
 またメールにはこんな事も書いてありました。
 「金管楽器の暖かいサウンドと可能性を追求した、素晴らしい曲です。」
 私はこの言葉を見た瞬間、メンバーがプロの演奏家としてのプライドにかけて、この作品に取り組んでくれていることを、心の底から嬉しく思いました。初演が楽しみです。

First Performance & Data
Date & Place 夏休みファミリーコンサート
2000年8月27日 神戸市立西区民センター
Performer Trumpet:戸田直夫 灰塚啓一郎 Horn:吉田雄大 Trombone:新田幹男 Tuba:丸若哲
Duration 約5分(予想)


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Itaru Sakai
Last Update : 2002.7.7
First Release : 2000.8.1